2012年4月14日土曜日

4-2. 茎・二次成長


4-2. 茎・二次成長

4-2. 茎・二次成長

4-2-1. 茎の断面

組織分化した茎では、最外層の表皮の内側に柔組織があり、柔組織の中を木部と篩部が通っている。被子植物では、茎の維管束は木部が茎の中心側、篩部が茎の外側にあることが多いが、カボチャの例のように、木部の両側に篩部があるものもある。


ドクダミの茎の断面

双子葉植物では、維管束がほぼ一円筒上に並ぶ(断面を見ると維管束が一つの円を描くように並ぶ)ことが多いので、その外側の柔組織を皮層[cortex]、内側の柔組織を[pith]と呼ぶ。


上―ニワトコ(スイカズラ科|レンプクソウ科)の茎(乾燥したもの)の髄の細胞

左―オニノゲシ(キク科)の茎の断面。

髄は、大きくて細胞質が少ない柔組織からなる。ある程度茎が太くなると、髄の細胞が壊れて中空になるものも多い。

ニンニクの茎の断面

単子葉植物では、維管束は柔組織全体に散在する(複数の同心円を描くように並ぶ)ことが多く、皮層と髄の区別ができないのがふつうだ。

4-2-2. 茎はさまざなしくみによってシュートを支える

スイバ(タデ科)の茎の断面
上の写真の白黒画像。▼で茎の表面の盛り上がった縦筋(稜 りょう[rib])を、▽で維管束を示す

スイバの茎の断面、稜と維管束を含む部分の拡大。稜(左)の内部は厚角組織で占められ、維管束(中央)は繊維細胞の組織にはさまれている。茎の中心部に近づくほど(右)細胞が大きく、細胞壁が薄い。


草の茎の断面を見ると、繊維細胞や厚角細胞がところどころにあって茎の強さを支えていることが分かる。これらの細胞は維管束の近く、従って茎の周辺部にあることが多い。逆に、中心部(髄)では細胞は大きいが細胞壁も薄い傾向がある。さらに、髄の細胞が死んでしまい、回りの細胞の成長に追いつかずに、空洞になっている種類も少なくない。イネ科では、茎の回りを葉鞘が取り巻いて補強している。このように、草の茎は、おもに周辺部によって支えられている。同じ量の材料を使った場合、ただの棒よりも中空のパイプにした方が折り曲げに対して強いので、これは理に適っている。種類によっては、茎が角張っていて、角のところに繊維細胞が集中してさらに強さを高めている。


左―オドリコソウ(シソ科)の茎断面。中空で、四隅の盛り上がった部分(稜)がある。右―オニウシノケグサ(イネ科)の茎断面

シュート系は植物の成長につれてどんどん大きく複雑になる。シュートは、分岐するけれど合流することはないから、シュート系は、先の方に行くにつれて多数のシュートが付いているようになる。こうなると、茎頂分裂組織から作られたときのままでは、強度が足りないし、水の通路である木部・篩部の断面積も足りない。実際、一本の木を見れば、根元に近い茎ほど太くなる。この原則が守られなかったら、いずれ倒れてしまうか、その前に水分が行き渡らなくなって枯れてしまうだろう。同じことは、根にも当てはまる。だから、シュートも根も、全体の太さと木部・篩部を後から付け足していくしくみ(二次成長[secondary growth]を持っている。二次成長は双子葉植物ではごくふつうに見られるが、単子葉植物ではほんの少数のグループにしか見られない。ほとんどの単子葉植物は二次成長をしないため、茎と根が後から太くなることがない。

二次成長のようすは、シュートと根で共通している。木部と篩部の間の細胞が分裂組織になり、内側に木部を、外側に篩部を作り出す。この分裂組織を形成層[vascular cambium]という。



スイバの茎の維管束(パラフィン切片・ヘマトキシリン-サフラニン-ファストグリーン三重染色)。木部には導管(V―新しく太い導管、v―古く細い導管、V'―形成中の導管)、篩部には篩管(se)・篩部伴細胞(矢印)が他の細胞に混じって分布している。木部と篩部の間には平たい細胞が整然と並んだ形成層(ca)がある。


セイタカアワダチソウの若い茎の断面と維管束。右の写真は、上から、篩部(細胞壁はやや厚いが染まっていない。大小の細胞が入れ交じる)→形成層(細胞壁が薄い。細胞がやや整然と並ぶ)→木部(ピンク色に染まった導管がある)。篩部の上に柔組織より小さな細胞のかたまりがある。この部分が繊維細胞群に変わっていく。

セイタカアワダチソウの茎の維管束。上の写真より古い茎で、上� �ら、篩部繊維細胞群(サフラニンで鮮紅色に染まっている)→篩部(細胞壁はやや厚いが染まっていない。大小の細胞が入れ交じる)→形成層(細胞壁が薄い)→木部(暗紅色に染まった導管がある)。


セイタカアワダチソウのさらに古くなった茎の断面と維管束。形成層がリング状につながっている。形成層と木部の間に繊維細胞の層が発達している。

茎の横断面では、形成層が維管束どうしをつなぐようにリング状になる。形成層の細胞分裂の結果、隣り合う維管束同士の境目はだんだん分からなくなり、篩部・形成層・木部が同心円状に並ぶようになる。根の横断面でも、形成層の細胞分裂によって木部が円形に(立体的に見ると円柱状)なり、やはり篩部・形成層・木部が同心円状に並ぶようになる。

草と木の違いは、「二次成長がどれくらい続くか」という違いである。草では、茎はある程度で太るのを止めるが、木では、茎や根が何年も太り続け、断面積のほとんどを木部が占めるようになる。こうしてつくられた大量の木部を「」[wood]という。材は木部の細胞壁のリグニンとセルロース、そして細胞の間にもリグニンがあって強靱さ(特に圧縮抵抗性)と耐久性を兼ね備えている。木の中には、高さ数十メートルに達するものもあるが、そういう巨樹のからだは、太い幹の中を占めている材によって支えられている。

ゴンズイ(ミツバウツギ科)の若い茎の断面。

ゴンズイ(ミツバウツギ科)の若い茎の断面(拡大)。つながった維管束形成層(左から2/3あたりを縦に走っている)が左側に厚い木部を作り出している。



シュロ(ヤシ科)とモウソウチク(イネ科)

タコノキ(タコノキ科)の気根(支柱根)

単子葉植物に木が少ないのは、二次成長をしないためである。単子葉植物の中には、茎を太くする代わりに葉の一部や根を使って茎を補強するものがある。イネ科では葉鞘(後述)がときには何重にも茎を取り巻いていることが多く、タコノキ科では茎からたくさんの根が出て添え木のように茎を支える。ヤシやタケのような巨大なシュートは、伸長する前に茎頂分裂組織の細胞分裂で十分な太さを確保して、初めて伸び始める。これらの種類では上と下で茎の太さがほとんど変わらない。そのため、ヤシはほとんど枝分かれしないし、タケは細い枝しか出さない。上の定義に従うと、ヤシやタケは「草」になるが、「木」として扱われることもあり、「木でも草でもない」とされることも多い。

切り倒されたスギの幹の断面。内部の赤っぽい部分は「心材」、その外側の白っぽい部分は「辺材」と呼ばれる。幹が太るにつれて、内側の辺材からしだいに心材へと変化していく。心材の導管・仮導管は詰まって機能を失うが、いっそう緻密になって、植物体を支える役割だけを果たすようになる。


アカマツのやや古い丸太。辺材は菌や昆虫の被害がひどいが、やや肌色がかった心材の被害は比較的軽い。

材の主な用途としては、(1)建築家具材・(2)製紙原料・(3)燃料、が挙げられる。木造建築や家具の材料として使われるとき、材の性質はフルに発揮される。材を砕いたチップを製紙の材料として使うときには、セルロースの割合が高いほど良質(白くて黄ばみにくく滑らかで吸水性が良い)なため、化学処理によってセルロース主体の化学パルプとセルロース以外の成分(特にリグニン)を含む処理液(「黒液」)とに分離することが多い。材の有効利用と廃液による水質汚染の防止のためには、黒液を再利用する方が望ましいので、製紙工場の動力源(燃料)として使うこともある。

内側が太り続けていても表皮やその下の組織は細胞分裂しないので横に引っ張られ、裂け目が生じる。裂け目ができる頃、あるいはそれより前に、これらの組織では細胞が死んで緑色を失うことが多い。裂け目は、柔組織(根の場合は内皮の内側の柔組織)が細胞分裂して作る組織(樹皮 [bark])で埋め合わされる。やがて表皮やその下の組織は脱落して表面が完全に樹皮に覆われるようになる。いったんできた樹皮も幹が太り続けるとしだいに脱落し、内側で出来る新しい樹皮に交代する。



タブノキ(クスノキ科)の枝の一部。中心の「ねじ山」は、冬芽のあった場所を示し、その左側は3年前、右側は2年前に伸長した部分だ。若い枝は緑色だが、年数を経た枝では表面に小さなひび割れ(皮目)ができ、もっと時間が経つと表皮が樹皮に置き換わっていく。


ナンキンハゼ(トウダイグサ科)の幹。古い樹皮には、内側が成長する圧力で縦横に裂け目ができる。名札を結わえ付けていた針金が、新しくできてきた樹皮の成長によって覆われてしまった。


カゴノキ(クスノキ科)の樹皮は鱗状に剥げ、鹿子まだらになる。


上: ダケカンバ(カバノキ科)の幹。樹皮は横向きに、皮をむくように剥げる。

左: ネジキ(ツツジ科)の幹。幹が太るときに縦に裂け目が入るとネジキのような樹皮になる。「ネジキ」の名前の通り、裂け目は幹を回り込むようにらせんを描く。


アサダ(カバノキ科)

4-2-3. 年を経た茎からは、それまでの成長の歴史が読みとれる

シュートや根では、できて時間がたった部分ほど、先端から遠いところにある。寿命の長いシュート、例えば、木の枝や多年草の地下茎では、葉や芽が落ちたあとにはそれぞれその痕(葉痕芽痕)が残ることが多い。芽・普通の葉・鱗片葉それぞれの痕の違い、枝の表面の経年変化に注意すると、枝のそれまでの成長の様子を読み取ることが出来る。ただ、あまり古くなり、枝の表面の組織がすっかり入れ替わるとこれらの痕跡は消えてしまう。


ホンコンカポック(ウコギ科)の葉は掌状複葉で、托葉は葉が広がるとすぐに落ちて、褐色の痕が残るだけになる。葉が落ちたあとも、葉痕(白い、リンゴのシルエットのようなかたち)と托葉痕(褐色の三角形)と芽が残る。


タブノキ(クスノキ科)。春に一気に伸びたシュートのつけねには、冬芽を包んでいた鱗片葉の落ちた痕が「ねじ山」のような輪の重なりとして残る。


枝を基部の方にたどると、昨春の鱗片葉の痕、その前の春の鱗片葉の痕とたどることができる。鱗片葉の痕から、一年間に伸びた部分が分かる。



ツワブキ(キク科)の地下部。サトイモと同じように、葉鞘の痕が同心円状に残る。1つのイモはある程度のところで成長や葉を出すのをやめ、葉腋の芽にそれらの役割が引き継がれる。花茎を出したイモもそこで止まるようで、下の写真の左側のイモは先端が花茎の痕で終わっている。成長・展葉を停止したイモは貯蔵器官となるが、さらに古くなると黒くしなびる(上の写真の左下)。



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