2012年4月22日日曜日

Kishikan Speaking: 根津神社の「つつじまつり」に行ってきました。


  • 湊 かなえ: 告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
    何故か湊さんの作品は初読みでしたが、これは衝撃的でした。中学生(未成年)の殺人ということもさることながら、被害者が担任教師の娘さんであり、親としての復讐心と担任教師としての教育者としての立場が複雑に入り組み、その他、クラスメイト関係性や対応、加害者の親族関係など、思春期の精神構造や壊れていく人間関係をそれぞれの告白という形で物語として紡いでいます。特に、第1章の担任教師の生徒への抑揚のない語りの部分が圧倒的で、6章の最後まで一気に読み切らせてしまいます。これから何を感じとるかが読者への課題なのでしょうね。

  • 穂高 明: これからの誕生日
    本の読了後、梅の花、ローソクとケーキが描かれた表紙、そしてこれからの誕生日というタイトルの意味を深く知ることだろう。物語としてはフィクションだけど、本のような集団事故はよくあるし、生存者が生き残った故に精神的ダメージを負うということは知られている。遺族の感情、生き残った者のダメージ、友人達の様々な対応など、本来はそれぞれ異なる自分(自我)と他人という関係でしか分からないが、第三者的な視点でそれぞれの心の動きを描いた所にこの本の価値がある。それにしてもこれからの誕生日を明るく迎えられるようになり良かったね。

  • 白石 昌則: 生協の白石さん
    遅ればせながら、2006年に大ブレイクした「生協の白石さん」を読みました。この本、東京農工大学の生協の職員だった白石昌則さんの、生協への質問や意見などが書き込まれたひとことカードに対する回答が主な内容なのですが、それが素晴らしい。難しい質問や恋だの愛だのという生協には関係のない質問に対しても、巧みにかわしたり、しゃれの効いたウィットに富んだ文章で、こりゃ誰でも白石さんが好きになっちゃいますね。ブログやツィッターやテレビにも紹介されたり、最近は5年ぶりの生協の白石さんも発刊されたとのこと、是非見てみたいな。

  • 小川 糸: 食堂かたつむり (ポプラ文庫)
    ずるいよ小川さん。豚のエルメスの最後でさえ哀しくなってしまうのに、亡くなったお母さんの倫子ちゃんに宛てた手紙を終盤に読ませるなんて・・。泣けてきちゃうじゃないか!女性の食堂店主を描いた小説は、かもめ食堂、マグダラのマリアなどがあるけれど、複雑な人間関係に疲れいろんな悩みを持つ人達に、心のこもった癒しの食事を提供する話はなかったね。彼女自身も悩みをいっぱい抱え、今にも砕けてしまいそうになっているけど、周りに助けられながらも、それを乗り越え作った「食堂かたつむり」。倫子ちゃんも明日はきっと幸せな日になるよ。

  • 沢村 凜: ディーセント・ワーク・ガーディアン
    ミステリ要素より、一般の人には関わりの少ない労働基準監督署の仕事が良く分かり面白い。経営者や人事関係の人からは疎まれているけど、本当は労働事故を防いだり働く環境をより良くし、しいては生産性の向上につながるんだけど、なかなか理解されない。成果主義による年俸制の導入など、欧米の制度を積極的に導入しようとするくせに、労働者の地位が欧米なみにならないのは何故なんだろうね。契約社員や派遣だってそうだね。全体としてはとても面白い話だけど、第6話の離れて暮らす奥さんの妊娠話は、全体の流れと違って重くて辛い話だなぁ。

  • 中田 永一: くちびるに歌を
    抜けるような青空に浮かぶ真白な雲、五島列島を舞台にした青春小説です。プロローグは15年後の自分に宛てた手紙。そして、わけありの家族を持つ私と僕二人の視点で話が進みます。中学生合唱コンクールを目指した部活の話なのですが、家族、友人、男女関係の複雑さを純な心の子ども達が辿る大人への自立という課題も織り込み、とても深い、でも溶け込みやすい話に仕上げています。ラストのコンクールまでの盛り上がり、そして課題曲を歌う中で追想する(僕が書いた)15年後の自分への手紙は、泣けます。読了後は再びプロローグを!感動再度です。

  • 三崎 亜記: 決起! コロヨシ!!2
    そうですか「ころよし」シリーズは三部作の予定なのですね。終わり方が未来への旅立ち、なのでどちらも有りとは思っていたのですが。前作と比較し、本作はスケールが格段に大きくなった感があります。ただ前作を前提に物語が始まり、学園生活編が一気に進みますので、初めてコロヨシを読む人には最初は辛いかもしれません。読み進めると、掃除の技とか対戦相手、隠された様々な謎、この世界観にどんどんはまります。僕としては三崎さんの「街もの」が好きなんですが、こういうのも良いですね。あと掃除の動きが実際どういうものか想像し難いので、解説があったらなぁ。

  • 門田 和雄: 基礎から学ぶ機械工学 キカイを学んでものづくり力を鍛える! (サイエンス・アイ新書)
    予備知識を少し持っていれば、とても分かりやすい。ものづくりを知るためにはうってつけの書。

  • 門田 和雄: 基礎から学ぶ機械工学 キカイを学んでものづくり力を鍛える! (サイエンス・アイ新書)
    予備知識を少し持っていれば、とても分かりやすく読めます。ものづくりの分野を知るためにはうってつけの書。

  • 芦原 すなお: 雪のマズルカ (創元推理文庫)
    芦原さんは最近お気に入りの作家で良く読んでいるんだけど、この雪のマズルカ(原題:ハート・オブ・スティール)はちょっと異色の作品。解説にもあるように女探偵が主人公ということや、芦原さんには珍しいハードボイルド。僕はおとぼけた会話の中にピリッと胡椒の効いた作風が好きなんだけど、これはちょっと違うなぁ。といっても、作中の仕掛けは結構鋭くて、ピストルを簡単にぶっ放すシーンがなければ、結構イケテルと思うんだけど。ほんのちょっとだけど、「月夜の晩に火事がいて」の山浦歩探偵が電話で、とぼけた会話をするところが好きだな。

  • 桜庭 一樹: 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)
    気にはしていたんだけど、何故か今回が初読みだった桜庭さん。ファンタジーのような、そうでないようなタイトル、でもまぁ良いかと思い手に取った一冊。最初のシーンが僕の苦手なサイコパスっぽい設定なので、うーん参ったと思いながら読み進める。でもだんだんと主人公の中学生なぎさと藻屑の異常な言動に、知らず知らず惹き込まれてしまう自分がいた。僕たち大人は子供達の気持ちをどれだけ理解しようとしたんだろう。大人への成長過程で、子ども達はどれだけ純粋な心を死に追いやってきたんだろう。この本の問いかけは、十分過ぎるほど重い。

  • 高田 郁: 夏天の虹―みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 (時代小説文庫))
    夏天の虹というタイトルからは、明るい内容を想像してたのだけど、表紙を見たら何となく暗さが漂っている。事実4つの章全体を通して、悲恋と苦難がこれでもかと澪に襲い掛かり、読み手も辛くなってしまう。帯に悲涙の第七弾!なんて書いてあるけど、苦境から立ち上がる澪の姿に感涙するんじゃないかな。だから今回は苛め過ぎという感もするなぁ。小松原さんとの関係はまたどこかで、という期待もあるけど、又次さんをああいう形で失うのは惜しい。それと巻末の瓦版はグッドアイディア。半年ペースでの出版が1回お休みですって!次待ち遠しいなぁ。

  • 長岡 弘樹: 傍聞き (双葉文庫)
    それぞれ救急救命士、刑事、消防士、更生保護施設長を主人公にした短編集。なかなか実態は知られていない職業だけど、社会の維持のためになくてはならない仕事。彼ら彼女らの仕事の本質(熱い信念と人を愛する心)を語りかける良質の本です。それに、それぞれの作品に謎解きの要素が入っているので、ミステリとしても良くできています。中でも更生保護施設に関してはあまり世に知られていないので、例えば保護士の活動について知るきっかけにもなります。傍聞きというタイトルにもあるように、常に身の周りに気を配って仕事をしている彼らに感謝!


    ハーブは猫にpoisionousですか?
  • 角田 光代: さがしもの (新潮文庫)
    本当は古本屋で「西の魔女が死んだ」を購入したつもりが、「さがしもの」に「西の魔女・・」のカバーをすり替えた者がいたらしい。ひどい奴だと思うが、でも僕にとっては嬉しい出会いになった。この本を含めて、本との出会いはとても不思議な縁だと思う。また新たな世界の発見もあり、とても素敵なことだとも思う。様々な人がいて、様々な本との出会いがあって、様々な生活がある。同じ本を読んでも三者三様、いや百者百様の感想がある。人の見方もそれと同じだ。角田さんはそれを伝えたいのかな。全9編のうち、ミツザワ書店が心に深く残りました。

  • 乾 くるみ: 蒼林堂古書店へようこそ (徳間文庫)
    ミステリファンには、たまらない本。商店街からちょっとはずれた場所にあるミステリ専門の古書店が舞台。100円以上の売買をすると、店の奥でコーヒーが飲めるサービス付(いいなぁ、こんな本屋さんがあったらなぁ!)。そこに集う4人とマスターが本にまつわるミステリ談義をする14の短編集。それ自体ミステリの要素があり面白いんだけど、一編ごとに関連する推理小説が紹介されており、これまたたまらない魅力。でも知らなかった、森博嗣さんの「夏のレプリカ」「赤緑黒白」そして「幻惑の死と使途」がこういう風に関連付けられていたなんて!

  • 倉橋 由美子: よもつひらさか往還
    倉橋由美子さん初読み?だったかなぁ。だいぶ前に何か読んだような。でも全然記憶にない、タイトルも浮かばない。さて、今邑さんのよもつひらさかは面白かったけどこちらの方は・・。う〜んnn、文学だなぁ!文章は現代風、でもかなり難解な所も。とはいえ行間に潜む意味は奥深く美しい。現世と黄泉の世界を結ぶ坂道「よもつひらさか」は、バーテンダー九鬼さんが作る数々のカクテル。主人公の慧はそれを飲み、様々な異界を行来し謎の女性(死人ですな)との幻想的な愛に浸る、という15の短篇集。それにしてもカクテルの話や神話、漢詩など倉橋さんの豊富な知識に驚き!

  • 黒野 伸一: 限界集落株式会社
    町・村興しの物語は、重松さんのいとしのヒナゴンや荻原さんのメリーゴーランド、有川さんの県庁おもてなし課など沢山あるけど、この本のような民間主導型は珍しい。ラブコメ風かつ若干教訓じみた文体は有川さん的だけど、日本の農業が抱える問題(兼業農家や農地法、流通など)に、経営で切り込んだ所はさすが黒野さん。日本の農産品は品質、味の面で世界1だと思うが、何せ制度でがんじがらめ。後継者も出ず個人事業の形態から抜け出せない中では、このような農業生産法人化も一案と思うが。ただし実際の限界集落問題はより深刻で、その解決はこんなに易しくはない。

  • 芦原 すなお: 月夜の晩に火事がいて (創元推理文庫)
    芦原さんて余り人気がないみたいだけど、僕は好きだなぁ。この「月夜の晩に・・」は、その芦原さんの本格長編ミステリ。出だしは、主人公の私立探偵山浦が故郷の友人から変な調査依頼を受けるシーン。少し翳のある背景描写が、黒川博行さんっぽい(でも大阪弁じゃない)が、次第に芦原さん特有のとぼけた会話(香川弁?)が加わって、ミステリなんだけど思わず顔がほころんでしまう。全体としては、事件の謎や当事者の心理など非常に深いものがあり、唸ってしまう出来栄え。ただ亡き奥さんとの夢の中での電話はその後どうなったのでしょうか、気がかり。

  • 梨木 香歩: 西の魔女が死んだ (新潮文庫)
    ベストセラーというとただ面白さが際立つものも多い中で、心に沁みて読後もずっと余韻が残る本でした。他人を尊重し、時に身を任せ、自分の心に忠実に生きること。それは現代に生きる者としては、相当強い意思を持たねばなりませんが、それを理屈ではなく「魔法を覚えることと同じだよ」「いろんなことができるようにならなくちゃね」と、おばあちゃんは孫のまいに語りかけます。森絵都さんの「リズム」にも似たテーマでしたね。誰もが持つ子どもの頃の苦い思い出や悩みが想い返されまずが、でもスッキリ晴れた気持ちにさせてくれる感動の本でした。

  • 相沢 沙呼: 午前零時のサンドリヨン
    青春ミステリ&ライトノベル。でも恋する乙女の・・・じゃなく、高校一年生の須川君が、ちょっと影のある女の子酉乃さんに恋心を持つという展開の日常ミステリ。彼女は凄腕のマジシャンでその技は魔法のよう。その彼女が、学園で起きる様々な事件の謎を解くんだけれど、それより須川君と西乃さんの恋の行方、友人間の人間関係を描いた青春物語として読み進めていったほうが面白い。作者の相沢さん、確かに鮎川哲也賞選考委員の評のように文章力は高いとお見受けするが、あの愚図で煮え切らない須川君のキャラはなんとかならなかったんでしょうかね。

  • 梨木 香歩: 春になったら苺を摘みに (新潮文庫)
    読み始めは内容もさることながら、梨木さん自身の海外での体験記と分かるまで時間がかかり、背景を理解するのに苦しみました。エピローグも含め、英国のS・ワーデンに滞在していた時にお世話になった、ウエスト夫人や友人との様々な体験、また英国だけでなく、トロント、ニューヨークを訪れた時の話など、10話からなるエッセイです。誰かのコメントにもるように、最初「ジョーのこと」などは、まるで翻訳本のような香りがあります。自然の描写もとても魅力的ですが、ウエストさんの話など人と人との触れ合いについて考えさせられる良本でした。

  • 百田 尚樹: 永遠の0 (講談社文庫)
    何度目がかすみ文字を追えなくなっただろう。何度涙を堪えるため顔を上に向けただろう。感動?そんなんじゃない、切なさでも悲しさや虚しさでもない。読み続けるうち、怒りや憤りで手が震えたり、時には愛や友情の温かさにジーんときたり、様々な心の動きを実感する。それ程素晴らしい百田さんのデビュー作。大戦でのゼロ戦をはじめとする兵器や特攻隊の話、軍隊の作戦の愚かさについては、巻末の参考文献や「失敗の本質」などに詳しい。しかし、この小説は戦争の愚かさの指摘というより、生きる意味や人の心の本質に迫る美しく優しさに溢れた物語だったと僕は言いたい。

  • 戸堂 康之: 日本経済の底力 - 臥龍が目覚めるとき (中公新書)

  • 高殿 円: トッカン―特別国税徴収官―
    高殿さん初読み。国税徴収官の話というと、思い出すのは「マルサの女」。闇・裏の社会や経済というドロドロとした話かなぁ、って思っていたら、おっとどっこいバラエティ。面白い!冷血で鬼のような特別徴収官そして彼の付き人たる新米女性徴収官の主人公グーちゃんが、失敗を繰り返しながら脱税摘発していく話です。税の取り立てはただ冷たいだけじゃないこと、税の本質の意味も物語の中で理解することができますね。文体は有川浩さん似ですらすら読めます。ただし、税隠しのからくりをグーちゃんが説明する場面は若干くどいかな。次作も期待大

  • 北村 薫: 語り女たち (新潮文庫)
    多くの人には読まれていないみたいですが、北村ファンの私としては「さすが北村さん!」と叫びたくなる数珠(17編)の話でした。小説新潮の読み切り連載なので極々短い物語。内容は、金持ちのボンボンが、本を読むより実際の体験談を聞いた方が面白かろうと、語り女を募集しお話を聞くという設定。現実にはありえない話ばかりですが、アラビアンナイトのようでもあり、童話、ファンタジー、ホラーみたいなものまで。僕もいくつか好みの話があるけれど、きっと誰もが何編かお気に入りの話があるでしょう。本当に語りで聞くのが良いかもしれないな。


  • 穂高 明: かなりや
    だいぶ前に購入していた本。でもこれは本当にずう〜っとお気に入りの本になりそうです。感謝!4編の短篇集で、それぞれ心の悩みを持つ人の話です。あまりの苦しさに、衝動で死を決意する時、救いの手が現れるという物語。その部分や登場人物の関わり方も感動を際立たせますが、生と死の世界とその境界を宗教と物理で説明するところも凄い。タイトルの「かなりや」の詩のように、唄を忘れたカナリヤでも環境を整えてあげれば唄を思い出す、つまりどんな人でもどこかに居場所はあるんだよ、そう穂高さんは言ってる気がします。

  • 加納 朋子: スペース (創元推理文庫)
    駒子さんシリーズ3作目。「ななつのこ」「魔法飛行」の圧倒的構成力と巧みな文章に心惹かれ読み続けてきました。主人公駒子さんの生活を通した乙女心の揺れ、そして文通相手の瀬尾さんの謎解きなど、加納さんは2作共異なる構成で楽ませてくれました。しかし驚くなかれ、「スペース」はまたまた異なる構成。今回は、駒子さんも瀬尾さんも裏方に回り(途中までは駒子さんは?って思わせます)、表舞台は駒子さんのお友達。ラストは、心のよりどころ(スペース)を探り当てる、愛と感動に溢れる美しい物語です。前2作を凌ぐ出来、素晴らしい!

  • 原宏一: 東京ポロロッカ
    東京と神奈川の境、多摩川でポロロッカが起きる?多摩川に沿った7つの町の住民が、ポロロッカが発生するという噂によって、それぞれの日常が変化していく物語。人はいつもいろんな問題を抱え、それがあるきっかけで様々に変化していくものなんだけど、そのきっかけが「ポロロッカ」とはね!ありえないって分かっていながら、でも、それは別の道を選択するための後押しなんだよね。この小説で、原さんはそれを上手く突いているのかな・・・。でも、もう少し強烈なバイラルCM効を書けば、もっと面白くなると思うんだけど、多摩川ポロロッカじゃ、やはり無理か・・。

  • 大倉 崇裕: オチケン! (PHP文芸文庫)
    そうですか、こうきましたか大倉さん。落語のオチの「なるほど」と思わせるミステリ性、また落語の話そのものを素材に用い、落語研究会の活動を通し大学生活の中で起きる事件の謎を解くミステリ。事件そのものは、古典落語の中でも有名な噺がキイになっているけど、それだけじゃなく、今ではほとんど演じられない噺も多く紹介され、落語通の人も満足!登場人物のキャラクターもそれなりに面白く、落語入門者向け青春ミステリとしてはなかなかの出来かな。シリーズ化とのことなので、次作は出来れば楽屋裏とか出囃子、落語の歴史も交えた物語になればなぁ。

  • 橋本 紡: 彩乃ちゃんのお告げ (講談社文庫)
    橋本さんの作品を読むのは3作目になるけど、これも優しくて切なくて、でも最後は「ほっ」と暖かくなります。人って、必ず重要な選択に迫られる時があって、それでいつも悩んでしまうんだけれど、そうした時に彩乃ちゃんのような子(別に子供じゃなくてもいいけど)がいて、そっと後押しをしてくれてたらなぁ、って思わず過去を振り返っちゃうんですよね。でも、少女だけど、突然教主さまとしての立場に立たされた彩乃ちゃん。子供としてやりたいこと、甘えたいことがいっぱいあるんだろうけど、そのけなげな態度に胸がキュンとなってしまいます。

  • 加納 朋子: 魔法飛行 (創元推理文庫)
    前作の「ななつのこ」が構成や文章共に印象に残る作品だったので、続編も手にしました。瀬尾さんへの手紙、主人公駒子さんの書くミステリ?小説、瀬尾さんからの謎解きの手紙という構成は今回も同じですが、駒子さんの学生生活も描かれそれがまた楽しい。今回の特徴は、各編の最後にミステリアスな「誰かからの手紙」が加わっていること。そして、各編独立した話になってはいるものの、どこかで関連付けられ、そのこの手紙が最後の物語の謎のキイになっているということです。今回もちょっぴり切ないけど、楽しさと優しさにあふれた素敵な物語でした。

  • 伊坂 幸太郎: オーデュボンの祈り (新潮文庫)
    伊坂さん初出の本がこのオーデュボンの祈り。吉野仁さんの解説にもあるけど、シュールだなぁ。これまで読んだ伊坂作品中でも超シュール。比べちゃいけないのかもしれないが、前期村上春樹的(大きく違うのはローカリゼイション)。時代を超越し、現実も超越した(といっても、現代社会構造を映し出しているんだけど)、でも色彩とか空気感を掴むのは上手いんだよね。未来を予知し喋る「カカシ」を一つの象徴にし、善と悪、生のテーゼ&アンチテーゼ、社会維持とそのカオスについて、思考の渦に巻き込んでしまう。う〜ん、やはりすごいぞ伊坂幸太郎!

  • 日野 俊太郎: 吉田キグルマレナイト
    そうだったのか、読んで分かったキグルマレナイトの意味。僕も日野さんが京大出身の若手作家と聞き、森見や万城目さんが思い浮かべてしまったのだけど、どちらかといえば万城目さんタイプかな。青春もののエネルギッシュさと京都の不思議さを交えたイベント系の話は面白いのだけど、もう少し深さが欲しかったところ。あるいは少し暗く、ハチャメチャな話にしちゃうという手もあるけど、それだと森見さんが凄すぎて・・・。それに、鞍馬をはじめ、叡山電車沿線、吉田の辺の街並みの描写も加えて欲しかったな。この明さは好感が持てるので次作を期待!

  • 森 晶麿: 黒猫の遊歩あるいは美学講義
    久々に僕好みのミステリ満喫!ポウはあまり読んでいないのですが、それはさておき、ポウの小説をモチーフに、黒猫があだ名の大学教授が美学という見地から美しく謎を解くこの小説はクリスティ賞に恥ぢない作品です。それに、付き人で語り手の院生の女性のキャラ、様々な登場人物の設定も印象深く、6話のストーリもヨーロッパの話と現代日本との根底部分のつながりで際立っていますね。「水のレトリック」「月と王様」は最高!教授と院生という関係や学術的謎解きという意味で、森博嗣さんのS&Mシリーズが脳裏に浮かびますが、同様に続編を希望!

  • 香月 日輪: 大江戸妖怪かわら版 1 異界より落ち来る者あり (講談社文庫)
    「妖怪アパート・・」に続き、このシリーズ第1巻を手にしました。時は江戸時代、妖怪達が住む魔都大江戸を舞台に、そこに住む唯一人の人間「雀」を主人公とした物語。人間達の世界の方が異界であって、ひょんな拍子でそのパラレルワールドとつながることがあるらしい。そんな話はよくあるけれど、妖怪達の江戸の町っていうのがいいじゃない。今回は1作目なので、主な登場人物や街並み紹介そしてお小枝ちゃんの話と軽いジャブ。次作からはどんな展開になるのか楽しみだね!でも香月さん、妖怪アパートもそうだったけど、教訓じみた表現、気になるんだなぁ。


  • 高田 郁: 心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)
    起承転結でいえば「転」にあたるのでしょうか、6巻めにしてこれまでの重い問題が、一気に澪に降りかかります。幼なじみ野江さんの見受け、世話になった天満一兆庵の再興、小松原との恋、「つる屋」で客の顔の見える料理をつくり続ける澪が、どれかを選ばねばならず苦悩する姿に、皆がやきもきするでしょう。小松原の「ともに生きるならば、下がり眉が良い」という言葉には男の僕でさえぐっときましたが、そのあとはちょっと見えていた展開だったかな・・。でも料理人澪は、迷うことない道しるべとなる「心星」をきっと見つけるのでしょう。結末や如何に?
  • 芦原 すなお: スサノオ自伝 (集英社文庫)
    これまで読んだ芦原さんの小説では、異色の歴史もの。それも日本創造期、つまり神話(古事記)の世界を描いています。天照の弟のスサノオが、現代において語る自伝で、この着想がまず面白い。それに、結構パロディも効き、500ページを超える長編それも古代の話は好みでない僕でも、飽きずに読むことができました。聞くところによれば、筋書きとしては神話の世界を大きく逸脱してはいないとのことですが、スサノオを始め、登場人物の性格設定は全く異なるようです。人生哲学として訴えるものもあり、加えて奇想天外な歴史小説として楽しめます。

  • 森 絵都: DIVE!!〈下〉 (角川文庫)
    やっぱりスポーツっていいなぁ!飛び込みという地味なスポーツをこんなに爽やかに、そして熱く語れるなんて、やっぱり森絵都さんだな。といっても、これまで読んだ森さんの話は、青春ものというよりは児童文学やファンタジックな中に心を打つようなものが多かったのですが、今回は違っていました。でも、思春期の多感な頃の友情、愛、正義感、孤独、挫折、勇気など様々な感情を個性ある登場人物に織り交ぜ、たった1.4秒の飛び込みの時間に賭ける若者の純粋さと熱情を上手く表現していたなぁ。良かった!

  • 森 絵都: DIVE!!〈上〉 (角川文庫)
    「少年はその一瞬を待っていた」この書き出しにしびれてしまいます。しをんさんの小説でもゴールシーンの「風が強く吹いています」のアナウンサーの絶叫が印象的ですが、森絵都さんは「飛び込み」というスポーツで、選手が空中に飛び出すその緊張の時を鮮やかに描き出します。もうこの一言で、この小説にはまってしまいますね。森さんにしては珍しい青春スポーツもの。それもダイビングというマイナーなスポーツを、メジャースポーツ以上に読者を興奮させるストーリ展開。そんな若者の熱い思いにページをめくる手が止まりません。下巻が楽しみ!

  • 初野 晴: 退出ゲーム (角川文庫)
    登場人物のイメージが掴みにくく、最初は入り込めなかったものの、次第に青春物の爽やかさに引き込まれます。部活の話にもっと踏み込んで欲しいと思う反面、ミステリ性とか会話の妙、学園ものの明るさの中で様々な人間模様を描く初野さんのストーリ作りに上手さを感じます。「結晶泥棒」のライトなミステリから「クロスキューブ」「退出ゲーム」「エレファンツ・ブレス」になるに従い、謎解きの技巧や読者へのメッセージ性が深くなり、ページを捲る手が止まりません。個人的には「クロス・・」と「エレファンツ・・」に小説としての魅力を感じます。

  • 高田 郁: 小夜しぐれ (みをつくし料理帖)
    「迷い蟹」の種市の過去との決別に目頭を熱くし、「夢宵桜」では野江の気丈な姿にジーンとなり、「小夜しぐれ」の美緒の思いとは異なる相手との婚礼に、切なさの中に彼女への激励の想いがみなぎる。今回も、人の情に心が洗われ、そして、そうした「思い」の飾り付けとして澪の料理が冴え渡る。さらに、ラストの「嘉祥」では、いよいよ小松原こと小野寺数馬が中心の物語。みをつくし料理帖もだんだんフィナーレに向かっているんだなぁ、とちょっと寂しくもあり、でも次作「心星ひとつ」が大いに気になる本作「小夜しぐれ」でございました。

  • 黒川 博行: 蜘蛛の糸 (光文社文庫)
    1992年から2008年にかけて、オール読物や小説宝石で発表された短編7作品。相変わらず黒川流裏社会(今回はヤクザな話はないけれど)を大阪弁とブラックな笑いで満載にした作品。どうして黒川さんって余り人気がないんだろう。ヤクザな世界とちょっとHな表現が多いから、きっと女性には嫌われちゃうんだろうな。図書館にもあんまり置いてないし。でも面白いんだよね。初出が10年以上違うのに連作になってるバカバカしい話や、作家志望の警察官のどうしようもない小説を売れない作家が添削する話があったり、良いんだけどなぁ。

  • 恩田 陸: 夢違
    読了後、しばらくの間何も考えられず余韻に浸っていました。SF、ホラー、ファンタジー、この小説をどのジャンルに位置付けたらいいのか。でも、そんな位置づけをすることさえ無意味と思える感動の小説です。物語が描く近未来、夢を可視化してしまう技術が確立した世界では、夢と現実が通い合い、記憶と夢、夢と過去そして未来が行き交います。そうした世界の中で恩田さんが語る「愛のあり様」。何度かゾーっとするスリルとサスペンスに満ちた話でもありますが、いえいえそれだけではありません。甘く切ない夢物語。これはなんと言っても傑作です。

  • 高田 郁: 今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)
    シリーズも折り返し点を過ぎ、いよい物語の全容が少し見えてきたかな。小松原との恋、野江さんとの再会、若旦那の行方、などなど、この「今朝の春」には盛り沢山の伏線が・・・。それに今回は、ハラハラドキドキするような事件、それになんといっても美味しそうな料理も。280ページ超えもあっというまに読み終えてしまいます。料理番付の大関争いを巡る「競い合い」もドキドキものです。それにしても、エンタテイメントとしての楽しみとは別に、澪を始めとした高田さんの描く「人の情」というものに、今回も感動の涙です。

  • 加納 朋子: 少年少女飛行倶楽部 (文春文庫)
    「ななつのこ」を読んで加納さんの他の小説も読みたくなり手にした本。明るくて、爽やかで、軽い、青春読み物。中学生が空を飛びたい?「無理、無理」・・・と思うなかれ。立派な部活動になっちゃうんです。でも、大人はなかなか理解してくれない。顧問も及び腰。部員は変なキャラクターの持ち主ばかり。数々の難題を乗り越え、大人の協力も得られ、ついに空へ飛び立つ・・・。青春モノっていいよなぁ。こんな中学生時代があったんだなぁ、なんて懐かしい気持ちにひたっていたら、小説のあまりの軽さに内容も飛んでしまい、空の彼方に・・・・。

  • 東野 圭吾: ガリレオの苦悩 (文春文庫)
    久々のガリレオ。5編(章)中「落下る」「操縦る」の2編は、ドラマ化された作品なので、ガリレオ=福山さんのイメージが残っちゃいますね。でも、ドラマとは若干異なる内容ですので、その違いを発見するのも楽しみですよね。僕は、TVドラマのアレンジの方が気にいってるんだけど・・・。長編の「容疑者X」などと異なり、短編集はさすがにトリックを始め、掘り下げが浅いので、物足りなく感じるところもありますが、その分展開が早いのでそれも一つの楽しみ方ですね。通勤電車などで、軽く読み進めるには最適のミステリ小説です。

  • 北村 薫: 鷺と雪 (文春文庫)
    「街の灯」「玻璃の天」そしてこの「鷺と雪」、ベッキーさんシリーズを全て読み終えて気付く北村さんの壮大な構想。三部作それぞれ、語り手である良家のお嬢様花村英子、そしておかかえ運転手であり才色兼備のスーパー女子ベッキーさんが、昭和初期の上流社会を舞台として、日常の不思議を解くミステリー小説として楽しめます。が、しかしシリーズを通してみると、当時の社会の動きを随所に散りばめながら、ベッキーさんの言葉や英子の心の成長を通しての北村さんの語りかけを感じるのです。数ある北村さんの小説の中でも、この三部作はお薦めです。


  • 高田 郁: 想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)
    シリーズ3作目。今回の作品は、ストーリをより味わい深くする飾り付けとして、料理の話が添えられているところが憎いですね。そのストーリとは、本のタイトル「想い雲」に示されるように、親と子、友達、姉弟、互いに離れ離れの生活を送る者が相手を思う心情です。小説の中では、辛くて、切なくて泣けてきそうな場面が何回もあります。でも本当に涙するのは、辛い時でも美味しいものを作ろうとする澪の強い心、そして優しい思いやりの心で、それを乗り越える感動に、なのです。料理も、話の展開も、江戸の風情の話も、ますます楽しみになってきました。

  • 大崎 梢: 背表紙は歌う (創元クライム・クラブ)
    これまでと同様良い感じ、大崎さんの本屋さんシリーズ。といっても、こちらは出版社の若手営業マンが主人公なのですが、成風堂シリーズよりはミステリ色が薄れ、軽目の謎解き(でも5編目のプロモーションクイズは濃い謎解きだよ!)。今回は、本の販売や作家さんと出版社の関係、文学賞の表裏など本に関わる話が盛りだくさんで、興味津津・心ウキウキ。ひつじくんと真柴さんの掛け合いを始め、5編のストーリの楽しさもさることながら、どうしても本に関わる話に目がいってしまいます。これは5編目の話と同じ読書ファンに対するプロモーションですね。

  • 梨木 香歩: 家守綺譚 (新潮文庫)
    新年早々、素敵な本に出会いました。舞台は解説にもあるように明治期後半の京都でしょうか、売れない若き物書綿貫が亡き友高堂の実家に「家守」として住まい、身辺におきる出来事を書き綴った28篇の物語です。どれもタイトルには植物名が付けられ、京都・滋賀の自然やまち、食べ物など、風土や四季の移ろいを堪能できます。また、謎に満ちたでも興味深い人達、河童や狸超能力犬なども登場します。と書くとバラエティ小説と思われてしまいますが、表紙絵の日本画のように、和心を味わい静かで優しい気持ちになれる感動の書物です。お薦めです。

  • 円城 塔: これはペンです
    う〜ん、10代の頃にこの本に出会っていたらなぁ。集中して文章を読む気が続かないんだよなぁ。芥川賞(「これはペンです」は候補だけど)って、どうしてこのような難解な文章のものだけが選考されるのかしら?さて、それはともかく、叔父と姪の話を綴った「これはペンです」、父と子の話である「良い夜を待っている」の2話のこの本は、読みづらさを別にすれば、いずれも興味深い話ではありますね。ただ円城さんの本にしちゃ読みやすい方かもしれないが、通勤電車の中で細切れに読む本じゃないね。表紙のオブジェのようなものも気になるなぁ。

  • 伊坂 幸太郎: モダンタイムス(下) (講談社文庫)
    忘年会やなんやらで、読み終えるのに時間がかかったけど、面白かったですね。なるほど伊坂さんならではの作品。僕としては、魔王との対比はもちろん、独立した読み物としてもいけると思うので、近未来的、社会派アクション小説として初めて読む方にもお薦めだと思います。それにしても、国家や会社というシステムの中で、いかに自分が無力な歯車であるか思い知らされます。システムの一部である自己の思いとは別に、システムはどんどん自ら(管理者)の目的を遂行していく、というのは怖いものですね。インターネット社会も一歩間違えば同じですね。

  • 伊坂 幸太郎: モダンタイムス(上) (講談社文庫)
    おおっと!伊坂は十数冊目になるんだけれど、久しぶりに、本当に久しぶりに読んでいます。上巻の感想・・・Very Good!たまらない!ひき込まれるゥ。「モダンタイムス」て言えばチャップリンだけど、これからはきっと伊坂も思い浮かべるんだろうな。近未来型、&地方も舞台に。若干ハードボイルド、洒落たギャグ込み、伊坂節満載そして炸裂・・・・。このまま下巻へ、いざ突入!!ヤッホー。

  • 高田 郁: 花散らしの雨 みをつくし料理帖
    シリーズ2作目となる「花散らしの雨」。タイトルからして、高田さんの思いがしみじみと伝わってくるようです。「ふきちゃん」という新メンバーも加わり、いよいよ「つる家」の基礎も固まってくるのだけれど、やはりシリーズ2作目というのは、難しいのでしょうか。美味しそうな料理、それも今回は素材の活かし方やみりんなど調味料の話もあり、食べ物の話には引き込まれるのですが、4編共ストーリ展開はちょっと浅いかなぁ。江戸の風情は出てきているのになぁ。小松原さんの出番が少ないからかしら?次作が楽しみ。

  • 三浦 しをん: あやつられ文楽鑑賞 (双葉文庫)
    「仏果を得ず」を読んで、三浦さんの文楽鑑賞作法というものがどういうものなのか、やや大人げない興味に誘われこの本を手にしたのですが、いやはや恐れ入りました!人形浄瑠璃(文楽)の魅力を余すことなく、それもど素人に対しても、思わずニヤリとさせてくれるユーモアたっぷりの話でした。これでは読者は文楽ファンにならざるを得ない。年に数回ほど歌舞伎を観に国立劇場に行くのですが、どうも小劇場での文楽公演が気になっていたのです。人以上の感情と心が人形に乗り移るという文楽。こりゃ、やはり一度は観に行かなきゃなるまい。

  • 小川 洋子: 博士の本棚 (新潮文庫)
    小川さんの文章は本当に澄んでいて美しい。ということは、これまでも思ってたのですが、その一方でいつも冷静そしてクールな目で見ている、そんな気がしていましたた。でもこの「博士の本棚」に収められた、思い出の本とそれにまつわる話、そしてちょっと息抜きのお散歩の話の数々には、小川さんの目でみたじんわりとした優しい気持ちが注ぎ込まれていました。言葉(文章)が持つ力は、ほんのわずかなものにしか過ぎないかもしれないけど、その言葉の力で未来に対する大きな期待や夢を描きたい、と感じさせる一冊でした。

  • 長沢 樹: 消失グラデーション
    第31回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作。長沢さん「面白い!」って一言で終わりたいところだけど・・・。ウ〜ン、でもなぁ作り過ぎと言えばそれもそうだなって感じ。学園モノ、部活(バスケ)、青春真っ盛り、ミステリ(謎解き)、恋愛?・・。読書好き若者が飛びつく材料てんこ盛りなんだけどなぁ。話の展開や事件の謎解きなど、すごく惹かれるんだけど、ミステリとしての本質がね。一番キーになる「謎」、でもこれって登場人物は皆知ってる訳だよね。知らないのは僕達読者だけ。それを最後まで引っ張るのは何故?でもそうしないとラストの謎解きができないのかぁ。そこだけが引っかかるんだよなぁ。

  • 山本 幸久: 寿フォーエバー
    今でも、ゴンドラ、スモーク、ミラーボール、ビーム光線、スライドショーなどの設備を持つ、専門結婚式場「寿樹殿」(玉姫殿ではありません。そして玉姫殿は今でも元気です。)の婚礼部に勤務する、ちょいと中途ハンバな27歳独身、靖子さんが主人公。様々なお客、ちょっとした事件にも巻き込まれながら、友人、同僚、先輩の力も借りながら、成長していく物語。というと純粋路線の話ですが、職場の仲間や式を挙げようとするお客も、結構トンデいます。ですから吉本新喜劇のように、ユーモラスで切ない、でも最後には明るく元気になる小説でした。

  • 高田 郁: 八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
    今年もあと数週間という時に、とても良い本に巡り会えました。時代物で料理話もと言えば「鬼平犯科帖」。でも鬼平が食べ物を従とした話であれば、こちらの「みをつくし」は料理人が主役。でも、決して物語が従の添え物ではありません。タイトル作「八朔の雪」他3編、茶碗蒸しなど各編の料理にも心惹かれますが、江戸時代に生きる町人の人情にも心打たれます。それに、主人公の澪ちゃんの大坂人根性とやさしさに声援を送りたくたくなってしまいます。つる屋の今後、小松原さんの謎、佐兵衛の行方が気になります。続作を読むのが非常に楽しみです。


  • 有川 浩: ヒア・カムズ・ザ・サン
    ほんの7行のプロットをもとに作り上げる小説、そしてそのプロットを主題としキャラメルボックスの成井さんの演劇から着想して有川さんが描くパラレルの小説。その2作を並行して本にするという企画は本当に面白いんだけどねぇ。同じプロットでも、親子愛、恋人との関係の持って行き方がこれだけ変わるのかなぁと、物書きの不思議さを再認識した次第でした。でもねぇ、有川さんにしちゃ、ぐウッと盛り上がる(燃え上がる)ところがなかったなぁ。超ライトになったって感じだなぁ。個人的にはパラレルの方が芝居には向くだろうし好み。



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