開花生理
●結球とは葉が何層にも重なり合った状態になることで、葉球と鱗茎の二つの>種類がありま
す。葉球を作る野菜には、双子葉植物アブラナ科のハクサイ、キャベツ、メキャベツとキク科の
レタス等があります。葉球の茎はほとんど伸び な いロゼット型で、葉の増加に伴い、葉が重なり
合って結球します(第1図)。初めにできる 葉は縦長ですが、結球する頃になると葉の幅がだ
んだん広くなり、また葉柄も短くなります。その結果、葉身長/葉幅長比が1以下の、横長の葉
になってきます(第2図)。
第1図 葉球の形態(キャベツ)
第2図 葉球構成葉の形態的変化
(キャベツ)
○葉球はどんな仕組みで結球しますか?
●葉球ができるには、まず20枚前後の葉ができていることが必要です。その後、展開していた
葉が、立ち上がって結球体制をとるようになります。この結球体制のきっかけには、光の明暗が
関係しています。外側の葉が立ち上がって結球体制を取ることで、内部葉は外葉によって光を
遮られて更に暗くなります。その結果、内部葉は一層重なり合うようになり、結球程度が進んで
いきます。葉球では、後で述べる鱗茎のように特別の葉ができるのではありません。この光の明
暗には、成熟葉の裏側の先端が最も敏感に感じます。従って、しっかりと堅く結球をさせるには、
まず十分に施肥を行い、沢山の葉を作らせて旺盛に生育させておく必要があります。 結球の
程度は種類、品種によって異なり、特にハクサイなどでは結球程度によって、抱合型、抱被型
と抱頭型があります(第3図)。
第3図 ハクサイの結球型
○チンゲンサイやパクチョイはハクサイの仲間と聞きましたが、
結球 しますか?
●ハクサイ類には多くの種類があり、結球の程度もいろいろで、結球種、半結球種と不結球種
があります。ハクサイ類のうち不結球種は、ツケナとして別のグループとして分けられます。こ
ペリプラズムものである
のツケナは更に幾つかの群に分類され、アブラナ群、カブナ群、タイサイ群、キサラギナ群など
があります。チンゲンサイやパクチョイは、中国野菜として近年栽培されるようになった野菜で、
いずれもタイサイ群に属し、半結球タイプです。葉の基部は堅く重なっていますが、葉の上半
分は展開しています。
本での栽培に何か注意点がありますか。
●ヨーロッパの気候は日本と比べて、かなり冷涼です。その気候風土で育ったキャベツを、高
温多湿の日本の気候に適合させる努力が明治時代以来払われてきました。その結果、どの季
節でも品種を選べば、周年栽培が可能になっています。しかし、高温期にできた球は多湿で腐
りやすく、また低温期には花芽分化しやすい傾向があります。 花芽分化して抽台が起こると、
球のしまりが悪くなり品質を著しく下げるため、播種期と品種の選択が重要になります。それで
も、暖冬あるいは寒波襲来などで、収穫時期が集中して、価格の高騰あるいは下落が起こりま
す。このため、多少播種時期を変えてやるのも、安全策となるでしょう。 また、キャベツ類の葉
の表面にはワックスがあり、乾燥や虫の害を防いでいます。結球が始まるまでに散布された薬剤
やほこりなどは、外葉に付着していますが、結球開始以降内葉には、農薬やほこりなどはほとん
ど無いでしょう。
●キャベツ類には多くの仲間(第4図)があり、結球しなくて茎の伸びるケールから、結球するキ
ャベツができました。その後、つぼみが多肉化したブロッコリー・カリフラワーや、茎の基部が肥
大したコールラビーができています。メキャベツもその仲間で、キャベツと異なり茎はよく伸長し
ています。多くの脇芽は小球となりますが、主茎の先端がキャベツのように結球することはあり
ません(第5図)。生育期間が長いため、日本でそれほど栽培が広がっていませんが、キャベツ
同様栄養価は高く、まとまって繊維分もとれるので、将来の消費の伸びが期待されます。
T-REX 、彼らはどのように多くの歯を持っていましたか?
第5図 メキャベツの草姿
●鱗茎を作る野菜には、単子葉植物ユリ科のニンニク、タマネギ、ラッキョウ、オニユリ等があり
ます。鱗茎では、茎はやはり伸びな いロゼット型で、葉数の増加に伴い地下部の葉が肥厚を始
めて結球します。 代表的な鱗茎であるタマネギ球を構成している4種類の葉を、第6図に示
しまし た。まず一番外側には、薄く茶褐色の保護葉があり、その内側には白色で著しく肥厚し
た肥厚葉と貯蔵葉があり、これらが球のほとんどを占めています。もっと も内部には、小さな萌
芽葉があります。> 保護葉と肥厚葉には葉身と葉鞘があります。葉鞘は双子葉植物の葉柄
に相当する器官です(第7図)。しか し、貯蔵葉になるともはや葉身はなくなり、光合成産物
を蓄えるだけの葉鞘組織だけが発達しています。萌芽葉は葉身と葉鞘を持っています。タマネ
ギは普通 4〜5月に収穫され、その後秋まで休眠に入っていますが、休眠が破れると萌芽葉
が萌芽して緑色の葉身が伸びてきます。
第6図 タマネギ鱗茎の構成葉
第7図 双子葉植物と単子葉植物の比較
この鱗茎形成には、冬季の低温経過が有効で、更にその後の春の温暖・長日条件で結球が
誘導されます。この時、温度の高いほど、また日長の長いほど、結球とその後の肥大は促進
されます。タマネギでは品種ごとに、肥大開始に好適な温度と日長があり、栽培地によって
品種選択が重要になります。
○アサツキ、ワケギをもらって秋に植えたのですが、ラッ キョウが混じっ
ていたみたいで、その区別はいつ頃になればできますか?
●ワケギはネギとタマネギの雑種であるため、抽台・開花はほとんどせず、夏過ぎにできる小球
で増やします。一方、同じ小球を作っ てもラッキョウでは、夏までに球ができ、秋に花が咲きます
が、種子はできません。抽台して伸びてきた花茎は、ニンニクのとうと同様に、中が詰まってい
何体つきですか?
ま す。アサツキはこれら2種類より、小球を最も早く着けますが、4月?5月に開花します。アサ
ツキの花茎はネギの花茎と同様に中が中空であって、ラッキョウ のように詰まっていません。従
って、球の肥大時期、開花時期や花茎の形から区別ができるでしょう。
●ニンニクの鱗茎は、通常の場合では8?10の小鱗茎が分球しています。これ>は定植した鱗
茎に花芽ができると、その後そ の下の脇芽が発達して、幾つかの小鱗茎ができてきます。とこ
ろが、小さな鱗茎を種球として植えたり、まだ低温期の春に植えたりした場合に、種球に花芽
がで きないことがあります。このように、分球できない種球では、1つの球となり中心球と呼ば
れます。このような中心球ができると、分球数が少なくなり減収とな ります。
○タマネギを播種後に、同じ場所 に誤ってネギを播種したが、両者
の区別はできますか?
●すぐには無理ですが、ある程度生育してくればできるようになるでしょう。ネギの葉鞘は肥大し
ませんが、タマネギの葉鞘は肥大します。また、ネギでは分げつしやすいが、タマネギではほと
んど分球しない。しかし、これらの形態的差異は生育がかなり進んでからで、播種後2カ月間は
その判定は困難でしょう。鱗茎が肥大を開始するするまでは、葉断面の形状の違いを利用する
しかないでしょう。両者の葉断面の形状には多少の差異があり、ネギでは丸形、タマネギでは
丸形がややくずれて楕円形になっています。種をまいた時には、やはりラベルにしっかりと日
付と名前を書いておくに越した事はありません。
●収穫期のタマネギ鱗茎では、主球以外に1〜2個の分球が起こっています。秋に植えたタマ
ネギ苗が早く大きくなると抽台しやすくなり、分球も増加する向があります。従って、播種期が
早かったり、肥料が多すぎたり、あるいは秋の温度が高くて生育が進んだりした場合には、苗は
大きくなって抽台しやすくなり、分球も増加する可能性があります。そこで、分球を抑え、抽台を
贈らせるためには、品種の選択、播種期、施肥量をきちんと守る必要があります。
●葉球でも鱗茎でもまず結球が開始するまでに、植物体を旺盛に生育させておくことが重要で
す。しかしあまり早く大きく球が肥大すると、抽台の項で説明しましたように、抽台が早く起こっ
てしまい、品質の低下を招きます。そこで極端な早まき、過度の施肥は厳禁です。 また、球
の大きさと収穫時期は逆の関係にあり、多収を期待するには、晩生種を選び、早い収穫を期待
するには早生種を選び、それぞれにあった施肥管理を守る必要があります。
●ハクサイやキャベツなどには、葉重型と葉数型の品種があります。葉重型では、球を作って
いる葉数は多くない代わりに、それぞれ の葉が重くなって球が充実しています。それに対して
葉数型では、個々の葉はそれほど重くない代わりに、葉数が増加して球が充実しています。葉
数型は早生種 に多く、葉重型では中生あるいは晩生種に多く見られます。
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